今月7日、自動車評論家の徳大寺有恒氏が亡くなられました。
徳大寺氏の代表作である「間違いだらけのクルマ選び」が上梓されたのは、当時ワタクシはバリバリの小学生である1976年。ワタクシの父親が徳大寺氏の熱心なファンであり、「間違いだらけのクルマ選び」が全巻揃っていました。よって、父親が買うクルマは徳大寺氏が褒めていることが前提。何せFF化された2代目カムリのことを徳大寺氏が83年度版の「間違いだらけのクルマ選び」にて6ページも使って激賞しており、それを読んだ父親は即座に購入を決定しましたから。
↑我が家に未だに全巻揃っています!(05年度の夏版が見つからないのですが) 上段の左の方には似ているようで違っている本がありますケド。
その影響を受けたワタクシだって徳大寺氏の大ファンでした。毎年「間違いだらけのクルマ選び」の新刊が出るのを心待ちにしていました。徳大寺氏が試乗記を掲載していたからこそ、今のベストカー誌、当時のベストカーガイド誌を中学生のころから愛読していたのです。NAVI誌もまたしかり。
各車に繰り広げられるのは辛辣な評価ばかりだったのですが、だからこそ時たま良い評価だとメチャ嬉しかったものです。ワタクシは最初から三菱ファンなので、88年度版の「間違いだらけのクルマ選び」で『トヨタを不安にさせる劇的なほどのよい出来』とのキャプションで始まる6代目のE30系ギャランの記事を、んもー繰り返し繰り返し暗記するほど読みました。97年度版で『スタイルもメカもNO.1のスペシャリティカー』とFTOのことを褒めていたのにも感動したなぁ。
それに先見の明だって大したものでした。日本でのステーションワゴンブームは初代レガシィが登場した1989年から始まったと記憶していますが、徳大寺氏は1976年の初著から『ワゴンこそ新時代のレジャーカー』だと断言。1991年に登場した2代目パジェロが火を点けたSUVブームですら、1977年に上梓された「続・間違いだらけのクルマ選び」で、当時日本ではスバル・レオーネ4WD/三菱ジープ/スズキ・ジムニーくらいしかなかった4WDのことを『新時代のレジャービークル』と名言されていましたから。
しかも、もはや日本のマーケットに欠かせないミニヴァンのはしりとなった初代の三菱シャリオのことも、84年度版で『小型乗用車の未来を拓く1.5ボックス』と絶賛。その他、あらためて各年度版を読み返してみても、まるで預言者のように様々なことを的中させていたことにオドロキを隠せません。
もちろん、その辛辣でストレートな物言いには反感を買うことも少なくなかったようで。なかには徳大氏のでっぷりした体格から『あの体型で試乗されても困る』的な言い方をされているのを見かけたこともありました。良いクルマばかりになった近年は文章にキレが見られなくなってきましたが、それでもその首尾一貫したブレの無い試乗記に、ワタクシ100%の信頼を置いていたのです。
ワタクシの初代愛車となった4代目プレリュードを買ったときだって、92年度版の「間違いだらけのクルマ選び」で『スペシャリティカーの王者にカムバックか』というキャプションで始まる記事に背中を押されたのです。徳大寺氏のおっしゃる通り、4代目プレリュードはスタイルと走りと乗り心地が高次元でバランスされた、とても良いクルマでした。本当にありがとうございました。
徳大寺氏のご冥福を心よりお祈りいたします。